花蓮【完結】
…多分、嫉妬。

俺だけの麻美だと、勝手に思ってたから。

自分が皆に紹介したくせに。
今まで誰かと話するのを見た事がなかったから。

だから、初めて感じたんだ。


「あの人が総長。
普段は優しいけど、切れたらもー手につかない」

「ふーん」

「麻美は俺の側にいろよ、女が一番こええから」

「…へーきへーき」

「平気じゃねえって。
何かあったら、俺が嫁にもらうしかなくなるじゃん」

「ぶは、勘弁」

「おい、即答かよ、ひでえな」


それからも、麻美は信司や他の総神のメンバーと話していて、それが俺は嬉しかった。

帰り、俺は麻美を家まで送っていた。
到着するまで、俺一人が喋ってたけどそれでもよかった。

隣にいることが幸せだと思ってたから。


麻美は帰り際、俺を呼びとめると

「連れてきてくれてありがとう」

そう言い残して家に入っていった。


そんな不意打ちの優しさにやられっぱなしで。
いつも考えていたのは麻美のことだった。
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