花蓮【完結】

「なあ、拓斗」

「え?」

「今日、総神んとこ連れてってよ」

「ああ、全然いいよ」

「………じゃあ、あたし今日他の授業サボるわ」

「あ、俺も行く」

「いーよ、あんたは受けなよ」

「ええ?だって、これから相沢だぜ?
ぜってー寝るし」

「…来なくていい」

「どーしたんだよ?麻美」


俺が腕を掴むと、麻美はそれをばっと放して俺を睨んだ。
それからすぐにその瞳が弱弱しく揺れた。


「ごめん…でも、今は放っといてくれ」

「え?あ!麻美!」


俺の呼びかけを無視して、麻美は駆けだして行った。


な、なんだってんだよ…。

拒絶するような瞳で俺を見たと思ったら、急に怯えたような瞳しやがって…。
何があったんだよ?


俺は知らなかったんだ。
この時の出来事が麻美から男を遠ざけてたってことを。

これから花蓮を築き上げてくのに。

なのに。
麻美は絶対男に頼らなかったんだ。

それならば。

俺が側で支えてたらいい。


そう、思った。
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