【完】水筒
「とりあえずお茶飲めよ。また倒れられると俺が困る」


「……はいはいっ」



 困る、なんてわざと言ったのだろうけど、ついムキになってぶっきら棒に返事をした。


 ひとたびグラウンドに視線を向ければ、矢張りみんなはバトンパスの調整やらをしているわけで。



「練習は?」


「幼馴染が心配なのでーって一旦抜けてきた」


「そんなに棒読みだったのに大丈夫だったなんて、先生もさぞ心優し…」



 こつんと軽く小突かれ、じっとりとした目で睨みつけた。



 じりじり、じりじり、太陽は照り付けているというのに、この木陰だけは別のようだ。


 とうとう寝転んだ隣の彼の顔を見れば、少し疲れが溜まっている様子で。



「…お互い様じゃない。さっさとお茶飲んだら?」



 渡されなかったもう片方の水筒を、ずいっと彼に手渡す。


 身体を起こして水筒のキャップを開けるのを見て、私も同じくキャップを開けた。


 同時に飲み口に口をつけ、お茶を飲み込んだのだけど。



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