不思議電波塔



 ユニスとセラミスが妖華の長に『鍵』をとられ、カウフェリン・フェネスの国々が活気を取り戻してゆく過程を書き終えた由貴は、のびをした。

 『尾形晴』が手を加えたのか、不自然を感じた場所はひとつひとつ丁寧に直して行った。自分の書いた物語とそうではないものの区別もした。

 これでカウフェリン・フェネスの過去についてはそう簡単には崩れないはずだ。

「書いた…。眠い。倒れそう」

 由貴の書いているそばから、不思議電波塔のモニターに映るカウフェリン・フェネスを確認して、フェロウも安心したようだった。

「倒れる前に、由貴、これを見るといい」

「何?」

 由貴が不思議電波塔に来て後、午前2時頃に涼が目が覚めて、由貴を探しに行くところだった。

 それから涼がユニスとイレーネと話をし、たった今由貴が書いたユニスたちの物語の話をするのを見て、由貴は苦笑した。

「…すごいな。これ、放っておいたらどうなるの?」

「君なしで彼らの物語が進行してしまうってことだけど…。どうする?涼ちゃんやら四季くんやら忍さんの生き方も君が決める?」

 それは違うだろう。由貴は「ううん」と否定した。

「涼や四季や忍の人生は、本人に決めてもらう。涼も四季も忍も、俺の所有物じゃないから。そうだね──俺が休んでいる間は、四季に『創造する』能力は任せる。涼や四季や忍がどう動くのか、そこだけは俺の書いた小説ではなくなってしまうけど、たぶんその方がいいと思う」

 そう言って由貴は、四季にそれぞれの役目を画面の向こうの四季に伝わるようにと思った。

 四季にそれは無事伝わり、ユニスたちが動き始めるのを見て、由貴はほっとして眠りに落ちた。

 何より、綾川由貴が意図したわけでもなく、涼から「ジャスティが呼んでいる」と言ってくれたのが、嬉しかった。



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