不思議電波塔
「人の感性は音に心を感じるようにつくられているのかもしれない。歌ではなくても──雨や波の音でも感じるようになっているから。でも、だとしたら、人はもともと意味があるようにつくられているんだと思う?」
「かもしれない。でも断定することは意味のないことかもしれない。人の言う言葉が別の人の言葉によって簡単に翻るように。でも旋律を聴いた時に心が揺らされる感覚があるのは、律するものがある、ひとつの世界がそこにあるということ」
由貴はそう言って、涼を見た。
「空即是色、色即是空という考え方があるけど、俺はそういう考え方に何処か疑問を持っている。それで納得が行く人ならそれでいいと思うけど、もし俺が仮にでも世界をつくれる力があるとしたら、そういう理論ありきでつくっても、虚しいだけだと思うから。つまらないよ。意味のないものをつくったって」
「会長は『神様』って何だと思う?」
「さあ。人はとかく人を中心に物事を考えたがるから、己にとって有益なことや甚だ大きい影響があるものを『神様』だと思うことはあると思う。或いは聖書の『神様』のように全知全能の、世界の創造主であったりね。でも、そういった人の考えていることとはまったく別のところに『神様』がいるのかもしれないよね。だけど、人は自分や利益に関係すること以外には関心を示すことは少ないから、本当の『神様』がいても平気でガラクタ扱いしていたり、気づかなかったりもするのかもしれない」