不思議電波塔
由貴は涼の話を聞いて…考え込む様子になった。
「そうか──音がなくてもすでに『認識している』記憶や感情があれば、反応や繋がりは起こりうる…」
「うん。たとえば目の前に会長がいなくても、涼は会長のことを考えたりすることがあると思うの。その間も涼の心は会長に反応してる。会長に食べて欲しいなってクッキー作ってたりするかもしれない。涼が会長のことを好きじゃなければ『クッキーをつくる』ことはもしかしたらなかったかもしれないはずなの」
「そうだね──関わり合いだけが世界を認識出来るすべてと考えてしまうと、自分の意識と同じように同時に存在する相手の意識は、ふれあわない限り『無いもの』としてしまうことになる。それは何となく違うと思う」
「涼もそう思う。──会長が『ユニス』を書きたかったのは、会長自身が神童のように扱われていると感じたことがあるから?」
「どうしてだろう。ペンを取った時に自然に書きやすいように書いていたら、そうなっただけなんだけど」
「『神童』と呼ぶ存在が必要な人がいるということを感じとったから?」
涼の問いかけはごく穏やかだったが、深かった。
「そうだね…。『ユニス』のような存在を必要とする人間はたくさんいるんだと思う。それが何のためなのか考え始めたらきりがなくなってしまうんだけど。でも生きている限りその疑問は一生ついて回るようなものだという気がして──書くことで心の整理をしたかったんだと思う」
「会長の書くお話がどうして選ばれたのか──それにもきっと意味があるのね」
「選ばれた?」
「消しゴムで消された跡があるということは、そうしたかった意図のある存在が何処かにいるということでしょう?良くも悪くも、会長の書くものに『反応』する理由があったんだと思う」
「──」
微妙な沈黙が訪れる。
そこにふと第三者の声がした。
「ここは『僕』がいるところ?」
揺葉忍が立っていた。
「忍?」
「忍…ちゃん?」
由貴も涼もありえない現れ方をする友人に、表情を固くする。
姿は揺葉忍だ。忍なのだが。
それでも揺葉忍が突然この場を訪れる理由にはなってない。
様子がおかしい。