天使の瞳
「つか、音羽ちゃん大丈夫なん?」
「どうやろ。あんま乗る気じゃなかったからな」
「まぁな。家ついたらもう一回見たれよ」
「おぅ」
車の揺れが凄くて酔いそうな気分になった。
その後の二人の会話なんて何も分からなかった。
何かを話してたけど全然頭になんて入ってなくて、千穂の家から晃くんの家までほど遠くないから、すぐに晃くんは車から降りた。
何故か、このまま目を開けたくないと思ってしまった。
また開けると、何かが見えそうで怖くなってた。
「…音羽?」
「……」
「音羽!?」
「……」
あたしを呼ぶタクの声が聞こえる。それとともに身体が揺れる。
何度も、何度もそう聞こえた瞬間、ガラッと開いたドアの所為で、もたれ掛ってたあたしの身体は一気に倒れ掛った。
「おっと、」
あたしの身体を支えてくれたタク。
肌に感じた外の生温かい空気。
「おいっ、音羽!!」
ビクっとするほどの声を上げたタクの声で、思わず閉じていた目が開いた。