年下の不良くん

「ああ、お前か
さっき済ませたばかりだ」


爽さんのお陰で話が逸れたことに、私は肩で安堵する


さっき父が言った言葉が、やたらと胸につっかえた


父は、今までに私の表情など一切気にしない人だったのに、今しがた、この人は私のそれを気にしたのだ


でも、その表情は私がいつも父にする、強ばったもの


毎回、見ていたと言うのに…いったい何故…??


「そうでしたか
…では、私達は他に用が御座いますので、この辺で失礼致します」


ぺこりと爽さんは会釈すると、私の腕を優しく取り、このだだっ広い会場を後にして、ホテルのロビーの椅子に私を座らせた


きっと、彼の手に握る私の腕から、私が震えている事を、気づいたのであろうか、優しく声をかけてくれる


「もう、大丈夫だ」


ぽんぽんと私の頭を撫でると、ポケットからケータイを取りだし、何処かに連絡をした


彼の口調から、相手は春樹だと理解する


「もう帰ろう
奴ももう、雑事を終えたらしいからな」


「あ、いえ…私は大丈夫です
戻りましょう」


私を気遣ってしてくれているのは、わかっているが、こんな私情を挟んではいけない場だ


早くに退散しようとする春樹は、私のせいでもしかすると、彼の評判が落ちるかもしれない


「馬鹿野郎、無理をするなと言ったはずだ」


「でもっ…!!」


立ち上がり背の高い爽さんを見ていると、戻ってきた春樹に呼ばれて振り返った



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