年下の不良くん

状況についていけなくて、口を開くのに時間がかかり、どう答えようかと考えていると名前を呼ばれる


「りりか」


返事をする前に腕を引かれて、自分とは違う体温に包まれ、余計にパニックになった


春樹にこうして抱き締められることは、数回程度である


「は、春樹…??」


彼からする匂いは何かの香水なのか、程よく私の鼻をくすぐり、何も考えられなくなる


「……りりか」


また名前を呼ばれたのだが、今回のは耳元で言われて体がぞくりとした


「──好きだ」


絞り出されたような低い春樹の声は、私の耳を通して脳へとゆっくりと前進していくようで、一瞬、思考回路が止まった気がした



…だが、それはほんの一瞬で、すぐに翔くんの笑顔が思い浮かび、私は、今自分が置かれている状況に慌てた


「ごっ、ごめん春樹っ
離してっ…!!」


モゴモゴと身動きをして腕から離れて、春樹と真っ正面になり、初めて春樹が何とも言えない苦しいような、泣きたいような顔をしていることを知る



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