年下の不良くん
深い溜め息をつくとやっと指輪を離して、テーブルにカチンと置き、乾ききっていた喉をアイスコーヒーで潤す
最初は世間体を気にして、気持ちも籠っていない指輪をりりかに贈ったが、日が増すにつれてその指輪にはちゃんと俺の想いが注ぎ込まれていった
それはもう、自分では信じられない速さで…
彼女に気持ちが俺に向いていなくても、婚約という縛りがあるのだから心配は無用だ、と余裕をかましていた
それに、一緒に生活をしていくのだから好きになるはずだと、そう思っていた
しかし、その考えは全て甘かった…
りりかは一度も俺には揺らがなかった
その証拠に、彼女は迷うことなく元の生活に戻ることを決めた…
「──あれ、しゃちょーさんっ!!」
横から呼ばれて俺は視線をそちらにやる
こんな抜けた呼び方をするのはたった一人しかいないし、この飛び抜けて明るい性格のお陰で俺の中の印象は大きく忘れるはずがない
「結花ちゃん…」
笑ったつもりだったのだが上手く笑えていないようで、彼女の眉間に少し皺が寄ったのがわかった