夏物語
「人間も一緒だ。きっと人生はまだまだあるって考えちゃダメなんだよ。今日、今しかできないことが絶対あるんだ。蝉にとっての1週間も、人間にとっての八十年も、たぶん変わらないんだよ。少なくとも昨日より今日は、確実に死に一歩近づいてるんだから。
お父さんが言いたいことは、若い、キラキラした一番楽しい時期を大切にして欲しい。それだけだ。」



最初は意味がわからなかった。




その理論じみた言葉の意味を本当に理解するのは、きっともっと先のことだろう。



だいたい、青春やよかった時期って言うのは、後から気付くものだから。



「…わかってるよ。」



「お前は俺そっくりだな。」




空を見れば、夕日が綺麗に海に映っていた。




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