アタシ。






アタシの手には納豆が
へばりついていた




「ちょ、なん・・・なんで納豆ッ」



あ、ありえない



アタシが手を置いたところには
納豆の食べかけのようなものが
転がっていたのだ





「うおー!朝食った納豆だ!
 そんな所にあったのか!」



はあっ!?


なに言ってんのこの人!





朝食って、なんでいま床に落ちてんだよ!





「ちょっと・・・、先輩
 この手、どうにかして下さい」


納豆がへばりついている汚い手を向けた







すると荒川先輩は
アタシの両脇の下を持って
軽々しく持ち上げた後、
そのまま洗面台へ連れていってくれた








蛇口から勢いよく流れ出す水の中に
手を突っ込み、納豆を洗い流した




・・・っはぁ



秀二、アタシも納豆嫌いになりそうだよ





「ごめんねー!碧ちゃーん」


顔の前に両手を合わせて謝る荒川先輩






「部屋の掃除くらいしましょうよ」


手の臭いを嗅ぎながら呟いた





「ごーめーんーって!
 お詫びにチューしてあげるからー」


肩に手を回し、頬っぺたに唇を寄せてきた







「・・・・。」






「・・・あれ?嫌がんないの?」








「先輩、よくそういう事してきますけど
 いつもすんどめで終わるから
 しないことぐらいわかってますよ」




「ふはっ、なぁんだ
 俺の事なんてお見通しって感じ~?」




「はい。第一、キスなんてしたら
 乃愛先輩にぶっ殺されますしね」



乃愛(ノア)先輩とは荒川先輩の彼女だ




「確かに。それが一番こえーわな」



そう言うと、アタシからスッと手を離して
二階へとのぼって行った





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