光の射す方へ


寒さが和らぎ、日が暮れる時間が少しずつ遅くなり始めた3月。



私は、あなたに出会った。




「おはようございま〜す。」



夕方、4時。


私は、いつも通り、バイト先の居酒屋『海賊』に出勤した。


「あっリカちゃん、おはよう。今日から新しく入ったバイトの、宝来君。仲良くしてやってな?」



そう言って、店長に紹介されたのが、歩太だった。




「宜しくお願いします。」



私が挨拶をしても、歩太は、私の事を見ようともしない。



染めた事がない様な、真っ黒の髪に、どこか寂しげな瞳が印象的だった。



歩太の顔には、表情なんてものはない・・・。



ただ、ぼーっと床を見つめているだけ。



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