地球の三角、宇宙の四角。
手の甲、頭、背中。


ほつりぽつりと雨粒。体中に雨。

握ったiphoneから『雨が降ってきて――じゃないよ』というゆっくりした声がした。

このしゃべり方、苦手だ。

『濡れるから早くしまえバカ』

顔を上げるとはゆみが店の外の四角く腰ぐらいまである灰皿を持ち上げて、寝癖の男に投げつけている。

テーブルをひっくり返して、物を投げつけ泣きながら怒っている。立ち上がろうとすると、みぞおちが痛んだ。


『ぐっ! じゃねぇホラ、濡れちまうじゃないか、ホラ』

握っているiphoneが発光した。


『物語はちゃんと作れ! しっかり見ろ! 大事な物をあきらめるな! 簡単に手放すな』

こんな機能はない。

こんなアプリは入れてない。

ため息をつきながらそう思い。改めてみる発光していた画面の光がしだいに弱くなっていった。


『オマエって本物のバカだろ、おい、よせ、バカ』









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