奇跡事【完結】


「ぐっ」

「キョウに何するのよ!」


その後ろから、サーシャが短剣をサーティスに振りかざす。
サーティスは黙ったまま、その短剣を腕に受けた。


腕に刺さったのに、サーティスの表情が変わる事はない。
血が滴り落ちる。



「……」

「マークおじさんの、……敵なんだから!」

「サーシャ。お前は……、いや」



何か言いかけたサーティスはサーシャを弾く。
壁に思いっ切り体を打ちつけたサーシャは意識を失って、その場に倒れこんだ。


僕の足は地面に張り付いてしまったかのように、動かない。
あの時と一緒だ。

動かない。


それからサーティスは冷たい視線を僕に向けた。


「……俺に殺されたいなら、本体で来い」

「……本体?」


そう、反芻するがサーティスは無反応だ。
……僕、に言っていない?


じゃあ、誰に?


サーティスは腕に刺さったままのサーシャの短剣を抜く。
抜いた瞬間に血が噴き出すけど、すぐにそれは塞がっていった。


やはり、サーティスは呪われているんだ。
死にたくても、死ねない呪い。
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