奇跡事【完結】
「…っ」
俺はその姿を見てゴクリと生唾を飲み込む。
驚きで言葉が出なかった。
紛れもなく、その顔はサーシャだ。
整った眉。ぷっくりとした唇。桃色の頬。何も変わらない。
髪の毛は昔よりも少し長かった。
「会いたいんだよね。僕達エレノア様に」
「……エレノア様に会いに行くには、力がないと無理です」
「力?」
パチフィスタに怪訝そうな顔を向けるサーシャ。
明らかに怪しんでいる。
「ここは普通の人間は通れません。
私は選ばれたんです」
「……選ばれたって、エレノア様に?」
「はい、そうですけど」
「ならさ、そのエレノア様にサーティスが会いに来たって伝えてよ」
「……」
「その必要はない」
サーシャがどう答えようか、困っていると凛とした声が割り込んでくる。
聞き覚えのある声だ。
「ズマーニャ様!」
そいつが現れた瞬間、サーシャは顔を綻ばせた。
それからすぐにズマーニャの元へと近寄る。
たったそれだけの事なのに、俺の胸は痛む。
このサーシャはあのサーシャとは違う。
わかりきっているのに。