奇跡事【完結】
エレノアはその赤い唇を妖しく歪めると、嬉々として話す。
「簡単な事よ。サーシャの純潔をサーティス以外に捧げたらいいの。
だからね、貴方が奪えばいいの。たったそれだけ」
言ってる意味が、理解の範疇を越えていて体が震えた。
サーシャの、純潔を捧げろって?
俺以外のヤツに?
「……な、んだよ、それ」
エレノアはクスクスと、さも楽しそうに笑うと目を細める。
「そのままよ?
よかったじゃない。
あの女が他の男に抱かれれば、呪いは解ける。
こんな簡単な事ないじゃない」
サーシャがいれば他に何も要らない。
この命だってくれてやるのに。
なのに、俺と一緒に産まれた所為で。
愛した男に殺されなければいけないだなんて。
そして、それを防ぐ為には他の男に純潔を捧げなくちゃならないだなんて。
「わかった」
暫く黙っていたトライシオンだったが、一言そう呟いた。
「トライシオン!」
「僕は元々サーシャに結婚を申し込もうと思っていたんだ。
僕を受け入れてくれたなら…自然な事だろう?」
「……それは」
「僕に任せてくれ」
「……」
もう、何も言えなかった。
曖昧な笑みを残して去っていくトライシオンの背中を見守る事しか出来なかった。