奇跡事【完結】
宙を舞う腕をサーシャに再度伸ばす。
そして、俺はその首に手を当てるとぐっと力を込めた。
苦しそうに顔を歪めるサーシャ。
だけど、抵抗する気はないみたいだ。
俺の腕をその細い指で掴むと、口をゆっくり動かした。
喉を圧迫されてうまく言葉が出ないから、口の動きだけ。
“ごめんね、ありがとう”
頬を涙が伝う。
何で、俺は泣いているんだ。
何も何も、感じないのに。
感じていない筈なのに。
嗚咽が漏れ、俺の腕を掴む手がだらんと垂れ下がる。
「……っ、サーシャ、愛して、る」
その体を強く強く抱き締めながら、俺はそう漏らした。
もう、サーシャには届かないのに。
「サーシャ!サーシャ!!」
その声はトライシオンだった。
相当慌てた様子で、俺の部屋の扉を開ける。
そして、俺と変わり果てたサーシャの姿を見て絶叫した。