こわれもの


4月上旬。

桜が満開の季節。


ヒロトとアスカは、花見をしに近所の河原にきていた。

他にも大勢の人々が、桜色の季節を満喫しにここへ訪れている。


桜並木の美しい河原の脇には、20段ほどの階段が伸びている。

その下方に腰を下ろすと、二人は屋台で買ってきた熱々のタコ焼きのパックを開けた。

花見期間や夏祭りの時、この河原には様々な屋台が並ぶ。

フライドポテトやたません、焼きそばなど、こういう場でしか食べられない物は、良い匂いを漂わせ、通行人や観光客の食欲を刺激する。


「こうやってゆっくり花見したの、学生の時以来だな」

「そうなの?

ヒロちゃん、本当に仕事熱心なんだね」

感心するアスカを前に、ヒロトはクスクスと笑う。

「仕事なんて、そんな熱心にしてねぇって。

テキトーテキトー」

「ヒロちゃんらしいね、そうやって言うとこ」

いい加減な人間のフリをするヒロト。

アスカは、ヒロトと付き合って初めて、彼のそんなクセを見つけた。

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