翡翠幻想

(青さま、わたくしは、しがない人の子でございます。竜王陛下のお側に上がるような身ではございません。弟もおりますし、それに……)

「両親の祭祀が、と言われてはな。死者は泰山府君の管轄だ。私に手の出せる領域ではない……」

 叶うことならば、死人の家族もろとも、この宮殿へ招いても良いくらいなのだが。

 はぁ、と竜王は溜息をついた。

「そんな風にお悔やみになるくらいでしたら、帰さなければよろしかったでしょうに。わざわざ、あの者らの廟がある邑まで送っておやりになったのは、どなた様でございますか」

 姉弟は叔父夫婦の家がある郷ではなく、もともと住んでいた両親の墓がある邑へ帰って暮らしたいと言った。

 そこで、竜王は二人に一生困らぬほどの財宝を授け、その邑へと送り届けたのである。

「良いのだ。珠明は、はじめ、財宝も何もいらぬと申したのだぞ。あれほど心のきれいな娘がいようか。私が我を通して、歪ませることもあるまい……」

 もう一度、竜王は溜息をついた。



fin.
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