愛しい背中【密フェチ】
「前、歩くなってば」
「どうしてっ……!」
その声に振り向く間もなく、抱き締められる。
「抱き締めたくなるだろ」
「……っ」
耳元で囁かれ、首裏が一気に熱くなった。
艶を帯びた声にジンと腰まで痺れが走り、膝から崩れ落ちてしまいそうになる。
彼の二の腕がホルターネックを着た私の肩に触れ、汗ばんだ肌が吸い付くようにくっついた。
「ど、したの……急に」
動揺で声が上擦る。彼がゆっくり息を吸うのがわかった。
「そろそろ、友達やめたいんだけど」
「え?」
言っている意味が理解できず、腕の中で身体を翻して彼を見つめた。
「彼氏になりたいってこと。……駄目?」
彼の目元は赤かった。ギュッと込められる力に、私の胸が嬉しさで震える。
――駄目なわけがない。
好きという代わりに、愛しい背中に腕を回した。
【fin】


