天の神様の言う通り、ここは素晴らしい学園ですっ
「ひ、酷いなあ」
「勇者、なんて、嫌いなんだよ。私は」
冬だけではない冷たさが、二人の間に流れた──りはしなかった。フェイレイは青年らしからぬ微笑みを浮かべて、おとぎを見つめた。おとぎはおとぎで、何を考えているのか分からない目をして彼を見つめている。
「でも、渇望はしている。そういうものだ。フェイレイ」
ありがとう、と彼女は口を動かした。音は声帯を揺らして声となり、フェイレイの鼓膜を揺らした。
「貶してんの?誉めてんの?」
おとぎは暫く思案するような様子を見せると、穏やかな表情をした。それはおとぎにしては珍しいものだったが、フェイレイは知る由もない。
「どうなんだろうね」古びた本を握り締め、誰にともなく言葉を投げ掛ける。
「きれいごとはきらいだった、はずなんだけど」
瞼を閉じたおとぎは、柔和に微笑んだ。彼の赤髪は、燃え盛る焔ではなく、暖かい篝火のように優しく灯っている。それはきっと、誰かの心の暗闇を照らす小さな希望となるのだろう。