失くした何か



「――な、なあ…?ちょっと休け…」

『何を言っているんですか。まだ丸一日しか歩いていませんよ』

「もう一週間も歩いてるって!!」


そうだったか?

自分の記憶を探っても、あまり覚えが無い。





…私達はあれから、暫く森の中を歩いていた。

勿論、目的も無く歩いていた訳ではない。

森を抜けると、ラルさんの親戚が住んでいる港町に出るらしい。


まあ、森を抜ける為には約一か月は歩き続けなければいけないのだが。


私としては、一刻も早く港町へ行き、ラルさんを親戚の元まで送り、一人の旅を再開したいと思っている。


そのためにも、できる限り歩き続けなければ。





しかし、どうもラルさんはか弱いらしく、一日か一週間か知らないが、とりあえずたったそれだけの日を休み無しで歩くだけで疲れていた。


『…仕方ありません。少し休みましょうか』

私が渋々そう告げると、ラルさんは早速嬉しそうに目を細めながら近くの木に体を預け、睡眠をとり始めていた。

そんなに疲れるものなのか。

私にはよく分からない。


いや、もしかしたら、分からないのではなく………



『やめた。考えていても、ね』

それ以上考え込むと、要らない事まで考えてしまいそうだったから、自分で思考回路を切った。





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