『若恋』若恋編




後ろに気配がある。


「若、龍神会がここを嗅ぎ付けたようです」

「………」

「表立った動きは今のところみられませんが、用心に越したことはないでしょう」

「………」

「若、」

「……わかった」



龍神会がここを嗅ぎ付けた。
俺がここで動きが取れなくなってるのを知られたのか。



「狙いは彼女…りおさんの方ですね」

「………」



俺を庇ったことで俺の女と勘違いされたか?

彼女は俺の女じゃないと言っても通じる相手でもない。


「ここにいたら成田を巻き込んでしまいます。若の言う通り、りおさんの容態が落ち着いたら早めに屋敷に連れて行った方がいいのかもしれません」

「その話にはおまえは反対だったんじゃねえのか?」

「反対です。けれど、時と場合によります。今は……」


榊の声が一段低くなった。





振り向くと榊が薄い闇の中で複雑な表情をしていた。



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