『若恋』若恋編



「若、そのへんにしておいてください。殺したら口が利けなくなります」


「ふ、殺しはしねえよ」


浴びた血を、頬を拭う。

龍神会の下っ端の3人が下腹を抱えて目の前に転がっている。


こいつらの顔を忘れてねえぞ。

3日前に俺の乗ってた車を襲撃したんだからな。

りおを、俺を撃ったのはこいつらと一緒にいた巨漢の男だ。


バキッ


顔が顔でなくなって肉の塊になった男の肩を蹴り上げる。

呻く力もなくなって無抵抗になった男が白目を剥いた。



「成田。若を止めてください。聞きたいことも聞けないうちに落ちては困ります」

「もう場所は聞き出したんだから、おっちんだっていいだろ?大体、急所は外してんだ。この程度じゃ死なねぇって」

「この転がってる連中はいいんですよ。ただ、若の拳が傷つくかと心配で」

「そこかい?」

「そうですよ」


前広が奴らの乗ってきたワゴン車を運転し助手席で榊が笑う。

スピードを出し揺れるワゴン車の中から龍神会の噂の支所が見えた。



「行くぞ」



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