『若恋』若恋編




「若、後をつけてくる車がいますがどうします?」


前広がルームミラー越しに問うた。


「構うな。放っておけ」


大神組を潰そうと企む輩は多い。
常に狙われていると言っても過言でもない。
後をつけられるのもしょっちゅうだ。いちいち相手にしていられない。


「若、市街地から外れましょう」

「いや、街中では奴らも暴れたりしねえだろう。放っておけ」


助手席の榊が眉を寄せた。


「若、もう一台いました」

「二台か…」

「違いました。全部で三台です!どうしますか?」

「若、海手へ向かいましょう」



榊の判断は正しい。

今は海手に出た方が一般人を巻き添えにしなくていい。


「大神の倉庫群へ」



「若、右に一台!」

前広がバンドルを切り、無理やり割り込もうとした右を阻止した。


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