『若恋』若恋編
「若、」
「……大神さん」
成田に抱き抱えられた女がゆっくりと手を伸ばす。
「ありがとう。助けにきてくれて」
にこっ。
その手をしゃがんでそっと掴んだ。
きゅっ。
握り返す温かさが胸に染みた。
「奏、おまえ変わったな」
成田が自分の白衣を脱いで女を包むと大事そうに横抱きして笑った。
「前のおまえよりずっと人間らしい」
「………」
「さあ、帰ろうぜ。ここにはもう用はねえからな」
「ああ、そうだな」
顔を上げると成田が視線を壁に叩きつけられた男に注いだ。
頷く。
「仁、後始末頼む」
「あいよ」
揚々として仁が俺たちが出ていくのを見送った。
―――りおが
拐われたなら。
俺は―――