『若恋』若恋編
「新しい携帯ありがとう。大切に使うから」
「ああ。」
りおがグリーンの携帯に触れる。
「……奏さん、ごめんなさい」
「―――何がだ?」
ビクッ
りおの声のトーンが下がると俺の声も上擦った。
「わたし、早く良くなって奏さんに迷惑掛けないようにして、それで。
それで―――」
言いたいことがわかる。
家に戻りたいのもわかる。
でも、今帰すわけにはいかない。
狙われるとわかったりおを帰すわけにはいかない。
「―――今はそんなこと考えなくていい。ゆっくり休んでろ」
「奏さん」
「もうすぐ、りおの両親が来る」
りおの視線から逃げるように背を向けて部屋を出た。
ドアを閉めて拳を握る。
―――俺のせいでおまえが狙われている。
正直にそう言えば良かったのだろうか?
今の俺には言えるはずもなかった。