『若恋』若恋編




「育子や照代には、ギプス外れたからもう少し良くなったら学校行くって伝えとくよ」

「う、うん」

「夜、また電話する」

「うん」



ふたりの間で火花が散ったことをりおは気づかない。

俺の知らないとこで新しい携帯で幼馴染みの男と電話していたなんて知らなかった。


「じゃあな、りお」


りおには笑いかけ、俺には何かを含んだ視線を残して幼馴染みは歩き去った。


「………」


幼馴染みの姿を見送り、りおは白い三角巾で吊っている肩を見て恥ずかしそうに離れた。


「あ、ごめんなさい奏さん」

「―――あの男は」

「え?樹のこと?」



近所に住んでてね。保育所からの腐れ縁で、物心ついた時からずっと一緒だったの。
今も高校クラス一緒なんだよ。


はじめて聞いたぞ。


「あいつ、と、付き合ってるのか?」

「ううん。付き合ってないよ。樹はわたしなんか相手にしないから」

屈託なくりおが笑う。


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