純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「……ただいま」


 夕方頃、玄関から桐生さんの無機質な声が聴こえた。どうやらアルバイトを終えて帰ってきたようだ。


「……おかえり、なさい」


 そんな桐生さんに、おそらくは聴こえていないであろう大きさの声で、その言葉を投げ掛ける。

 監禁されて今日で11日目になるのだけれど、酷いことはされておらず、むしろ優しくしてもらっているため、それくらいの言葉なら投げ掛けてもいいかなぁ……なんて。

 ……まあ、本人に聴こえていなければ、意味は成さないのだけれど。

 なんだか、いつもの見ていて危うい足どりで廊下を歩く彼は、ふわりと私の方に寄ってきて……私の頭を、ぽんっと撫でた。


「……えっ?」


 ぽんっと撫でられたところを、思わず両手で押さえてしまう。

 な、なに?今のは。まさか、私の「おかえりなさい」が聴こえていたからっていうこと……?

 余計なこと以外は何も話さない桐生さんとの沈黙の時間は、もはやいつものことだけれど……。

 桐生さんの次の行動を見張っていると、私の乗っているベッドの横の机を挟んだ向かい側――いつもの場所にその腰をおろした。

 頭を抱え込むようにうなだれていて、何やらいつもと様子が違う。
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