純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「いやっ!いや!いやぁっ!」

「……里桜」

「……っ?!」


 突然、桐生さんが私を下の名前で呼ぶのと同時に、私は桐生さんに抱き寄せられた。

 私の目の前にあるのは、桐生さんの大きな胸板。私の頭には、桐生さんの大きな右手。私の耳元には、寄せられた桐生さんの口元。

 あれ?叩かれない?殴られない?殺されない?襲われ……ない?

 今起こっている状況の意味が分からなくて、抱き寄せられた際の驚きのせいだろうか……とにもかくにも、すべてがすべて理解できなくて、零れ落ちていた涙が、ピタリと止まる。


「里桜……っ!」


 耳元で聴こえる、桐生さんの懸命さが伝わる声。どうしてそんなに懸命に私の名前を呼ぶのかは……分からない。


「里桜……里桜……っ!」


 ──今、頭の中が真っ白になっている私に分かるのは……。


「すまないっ!」


 ──桐生さんの切なげな声と。


「すまない……!すまない……っ!」


 ──肩に感じる、涙のぬくもりと。


「でも……でも、俺は……!俺は里桜を愛しているんだ……っ!」


 ──抱きしめられた桐生さんの腕の強さと、あたたかさだけ……。


 ねえ。桐生さん。

 あなたは私に、一体……何を望んでいるというのですか?

 何をすれば、ここから出してもらえますか?何をすれば、あなたからここを出る許可がもらえますか?

 どうしてそんなに切なげで、悲しげで……そして、苦しそうなのですか?
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