おさななじみ
電灯の灯りに照らされて、透明なビニール傘から見上げた空が少しだけ蒼く見えた。
 
未だ明けない梅雨の影響か、それとも少しだけ気の早い秋雨だろうか。
 
昼間から降り始めた雨はだんだん強くなってきている。
 
「涼しい」を通り越して「寒い」の域。
 


傘を持つ横雨に無防備な右手がだんだん感触がなくなるのが分った。
 
「カギ…どこやったっけ?」
 
濡れた傘を閉じてカバンのポケットを探る。
 


「…ばっかだな、学校出る時シャツのポケットに入れたんだ」
 

誰もいなくても口に出して喋ってしまうのは一人暮らしの悲しい性だと思う。
 
< 19 / 51 >

この作品をシェア

pagetop