空に放ったキミへの想い
Vol.1出会い
美琴…あと少し、もう少しだけ…。

届くはずなんてない。分かっていても届けたい。たった一言でいいんだ。

虚しい風が頬をかすめる。少年は苦笑して目を閉じる。こんな風に俺の想いを託してもな…。

空よ、見ているんだろう?だったら届けてくれよアイツの元に。そして俺に伝えてくれ…



2004年夏、今年も俺は一人だった。何故みんな俺の”良さ”が分からないんだ?見る目ねーよ。どいつもコイツも。オメーらの目は祭りのお面か!?ん?例えが変か?オメーらの目はメガネか?みんな見る目がねェ!なんちゃって♪アハハハハ…!

シ~ン…。

オイっ!いつまで俺みたいな逸材を一人にさせとくんだ!?誰か相方やれよなっ!つったく、今年も一人身かよ。そこっ!なんだそのシラケたマナザシは!おまえらの目はふし、ふし、伏し目かぁ!!(あ、間違えた。節穴だった。)…が遅かった。「その通りだよ~!カイちゃーん。」ケラケラと笑い声が教室を包む。ハハ、間違えちった。照れくさそうに笑う少年。

佐藤 快(サトウ カイ)は明るく、ひょうきんで元気だけが取り得の天真爛漫な少年だった。

都立「清爛高等学校」少し高台にあるこの学校は緑に囲まれた穏やかな場所で生徒の自主性を第一に尊重するとても自由な学校。自由だからこそ自分に厳しく…生徒たちの自制心も育つ、とてもバランスの取れた学校だと人気も高かった。だが、中には自由という盾に守られ、やりたい放題の生徒がいるのも確かだった。清爛高校には光と闇が存在していた…。

「次の問いを須藤。答えなさい。」少女は面倒くさそうに立ち上がる。答え…ポツリとつぶやく。

「答え。先生の授業はつまらないから帰ります。」

「なっ!?おい、ちょっと待て須藤!」

少女はカバンに教科書を詰め込むと先生の前をスタスタと横切り出て行った。

どよめく教室。「静かに!授業を続けるぞ。」

…まったく、須藤美琴には困ったものだ。ため息まじりに吐き捨てる。あ、小林先生もですか?僕の授業の時もひどいもんですよ。延々に携帯で話してるんですよ!?授業の妨げになります。なんとかならないもんですかねぇ…。いくら自由がモットーだとは言え、限度がありますよ。限度が!

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