右手に剣を、左手に君を


「この前の廃墟では、何をしていた」


「あのあたりでナンパした若者を、空亡様のところへ転移させてたのよ。

何人かいたけど、皆頭の悪そうな男の子だった」



玉藻が、くつくつと笑う。


こいつが、人間の姿になって男を誘惑したっていうのか?


そういえば、こいつは言葉一つで俺達の動きを制限した。


一般人ならば、すぐに意識を奪われてしまうだろう。


玉藻は足元の健太郎を見下ろし、言葉を続ける。



「でも、この子は強かったわ。

その女のことを尋ねても、なかなか吐こうとしなかった。

めんどくさかったから、寝かせちゃった。

そうとう抵抗されたけど」


「そのあたりにしておけ」



見かねた迦楼羅が、玉藻に口を塞ぐように言った。



「……人の子らよ。

空亡様の命令だ。

神剣もろとも、滅びてもらおう」



突然の宣戦布告。


迦楼羅は玉藻のように、自分から話をするつもりはないらしい。



「やるしかないか」


「だが、どうする?健太郎が玉藻の手中にある」



俺と雅がボソボソ話していると、渚がそこに加わった。



「わ、私……スキを見て起こしてみる」


「は?大丈夫かよ」


「わかんない……けど、二人は早く神剣を」



出して、と最後まで言い終わらないうちに。


迦楼羅が、その黒い翼を羽ばたかせ、ふわりと宙に浮いた。


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