最初で最後の恋文
「大丈夫!!茜はバイトがあるでしょう?早く帰ったほうがいいよ。」

茜は真琴の顔を見ながら、暗くなる前に諦めて帰りなよ。とだけ言って教室を出ていった。
真琴は茜を見送ると、さっき座っていた机にまた座り、遥斗が来るのを待った。

茜が帰ってから一時間が過ぎ、窓の外は薄暗くなっていた。
真琴の心も諦めかけ、帰ろうと鞄を掴んだとき、教室のドアが開いた。

真琴が開いたドアに目を向けると、そこには遥斗が立っていて、遥斗は真琴がいることに気づくと嫌な顔をして、ゲッ!と小さく言った。

「佐伯君!!やっぱり来てくれた。」
 
真琴は遥斗のことなどおかまいなしに嬉しく思い、大きい声で言った。

「はぁ?何のこと?」
 
遥斗は真琴に怪訝した顔を向けて、自分の机まで歩いていった。
そんな遥斗のことは気にせずに真琴は遥斗の近くまでいくと

「昨日、約束したでしょう!放課後に教室で待っているって!!」

と言って、遥斗を見上げた。

「そんな約束した覚えねぇ。」
 
遥斗は真琴にそう吐き捨てて言った。
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