最初で最後の恋文
今日のアルバム作りは、卒業式の予行練習があったため放課後に行うはずだったが、皆の都合により中止になった。
真琴は一人、生徒会室に鞄を取りに向かった。
 
最近は、写真を撮り終わる時間と生徒会室で作業をしている時間がバラバラになるため、いつも長引いている真琴と遥斗に香里は鍵を預けているので、真琴は勝手に生徒会室を出入りできる。
 
真琴は生徒会室のドアを開けると、遥斗が長机でうつ伏せになって寝ていた。
 
真琴は遥斗がいることに気づくと、少し鼓動が速くなるのを感じた。
さっき、茜に自分の気持ちを確認されたからだ。
 
真琴は少しずつ遥斗に近づいていった。
遥斗はぐっすり眠っているのか全然起きる気配がなかった。
真琴は遥斗の近くまでくると遥斗が眠っている長机の上には、今まで撮った写真が何枚も散らばっていた。
 
真琴は一枚ずつ手に取り、写真に目を向けた。
 
真琴の手にはある一枚一枚の写真は、どれも凄くキレイに写っており、真琴の頬はいつの間にか緩んでいた。
写真には、校舎、グランド、屋上、体育館、学食など真琴と一緒に撮った写真だけかと思っていたが、何枚かここで作業しているあたし達の写真もあった。
遥斗はあたし達が気づかない間に何枚かあたし達の写真を撮っていた。
でも、この写真の中のどれにも遥斗の姿はなかった。
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