最初で最後の恋文

Ⅷ、最初で最後の恋文

「真琴、一時までどうする?香里たちはそれまでカラオケにでも行こうかって話しているけど…。真琴も行く??」
 
遥斗が亡くなって二週間が過ぎた。
月日はちゃくちゃくと過ぎていき、真琴は手のある二つの卒業証書を茜に見せた。

「これ、届けに行ってくる。」

「…わかった。打ち上げには絶対に来るんだよ。」
 
真琴は茜に笑って頷くと校門を出た。
朝から積もっている雪は溶ける気配はなく、真琴はその雪に足跡をつけながら遥斗の家へ向かった。
 
真琴の手の中には、真琴の卒業証書と遥斗の卒業証書がある。
 
真琴は二週間前に訪れた遥斗の家のインターホンを鳴らした。
すると、直ぐに遥斗のお母さんが出てきた。

「遥斗君のクラスメイトの者ですが、遥斗君の卒業証書を持ってきました。」
 
真琴がそう言うと、遥斗のお母さんは目を細めた。

「そう。今日は卒業式だったのね。わざわざ、ありがとうね。どうぞ入って、遥斗にあいさつでもしていって。」
 
遥斗のお母さんは微笑みながら真琴を家にあげて、遥斗が眠っている仏壇に案内した。
真琴は仏壇の前に座ると、目の前には葬儀のときに飾ってあった無愛想な写真があり、その横には遺骨が入った白い箱が一緒に置いてあった。
 
真琴が無愛想な遥斗を見ていると、遥斗のお母さんはキッチンからお茶とお菓子を持ってきて真琴に話しかけた。

「もしかして、宮崎真琴さん?」
 
真琴は遥斗のお母さんに突然名前を呼ばれたので驚いた顔をしてしまった。
すると、遥斗のお母さんはフフッと笑った。
笑った顔が遥斗に少し似ていて胸がギューっとなった。

「やっぱり。ちょっと待っててね。渡したいものがあるの。」
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