うさぎ と くま の物語 (完)
その場に取り残された、私と篠田センパイ。
私は篠田センパイの表情を窺うように、話し掛ける。
「……あ、あの、副部長…?」
「うん」
篠田センパイはいつものような穏やかな表情で、私を見下ろす。
―――――あ、いつもの篠田センパイ…かな?
さっきみたいなピリッとした空気はそこにはなかった。
篠田センパイがふっと笑った。
「片岡、それ重いだろ?貸して」
篠田センパイは私が抱えていた荷物を手に取る。
「あっ!ありがとうございますっ!」
「ううん。いいよ。……それより、邪魔、したよな?ごめんな?」
「え?邪魔、って…?」
私は首を傾げる。
「いや、うん。佐崎と話してたとこに入っちゃったから」
「そ、そんなの…」
大丈夫なのに。
私にとっては今の時間の方が―――…。
…なんて言う勇気ないけど…。