HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-



 ――俺は何も悪いことをしていない。



 ……よな?

 しかも舞にとって俺はまだ、ただの「隣の席の人」だぞ?

 腹がこなれて気分も落ち着いてきたので、まず俺が一番最初にしなくてはいけないことは何かを考えた。

 ――つーか、考えるまでもないし。

 ゆっくりとか、舞のスピードに合わせてとか、そんなのん気なことは言ってられない。



 とにかく伝えなくてはならない、と思う。……俺の気持ちを。



 昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り、高梨が超ゴキゲンな顔で教室に戻ってきた。一瞬目が合うと、意味ありげにニッコリする。俺も同じように嫌味な笑顔を返した。

 舞にとって救いは、このクラスの女子の中に少なくとも一人は中立の人間がいるということだ。高梨が完全に舞の味方だとは言えないが、アイツは思ったよりもフェアな精神の持ち主らしい。

 ついでに英理子もいるし、それほど悲観すべき状況でもないような気がしてきた。

 ――まずは田中を改心させなきゃな。

 それから舞とどこで話をつけるか、だろ?

 進路? そんなものは後でいい。だいたい受験するのは来年なのに、何で今から決めておかなきゃならないのか、意味がわからない。

 生きる目標を見つけて、俄然やる気が湧いてきた。まずは午後の授業中に十分に休息を取っておこう。

 授業が始まると、俺は頬杖をつきながら目を閉じて、先生の声をBGMにして夢の世界へと旅立った。

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