HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 私は一つ大きな深呼吸をした。そして机の横にかけた鞄から教科書やノートを出すついでに勇気を振り絞って普通に座った。

 おお! やればできるじゃないか!

 視界の隅に清水くんがちょっぴり見える。だめだ、意識するとドキドキしてしまう。深呼吸、深呼吸!

 ふぅ……。

 そうこうしていると担任が朝のホームルームのために教室に姿をあらわした。いつもは全然冴えない感じの担任が、今日はまるで救世主のように見える。自分の意識がそちらに集中すると胸のもやもやから気がそれて少し楽になるのだ。

 それじゃあ、次の問題点を考えてみよう。

 「私はどうも清水くんが好きらしい」が「清水くんのどこが好きなのか」とか「清水くんってどんな人?」がわからない、ということだけど……それってつまり本当に清水くんのことが好きなんだろうか?

 本当ってなんだろう? 本当に好き?

 そんな疑問にぶち当たった私の目の前には、ひらひらとプリントがぶら下がっていた。……なんだこりゃ?

 訳がわからずポカンとした私の横から手が伸びて、プリントは私の机の上に着地した。清水くんが私の代わりにプリントを受け取ってくれたのだ。

 私はプリントに目を落とす。

「昨日休んだから知らないと思うけど、今日数学のテストなんだ」

 清水くんが私に少し身体を寄せて小声で教えてくれた。

「そう……なんだ」

 私はプリントから目を離すことが出来なかった。まずい。全然出来そうにない。どうしよう。
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