出会いから付き合うまで。
 でも、あたしは眠らなかった。
 あたしはその時間、メールをしていた。みんなと一緒にキッチンでジュースを飲みながら携帯の画面を見詰めていた。ちょうど草加君からメールが来ていた。
――忙しい?
――全然。草加君いないからつまんない。
――俺も更科さんに会いたい。
――早退しちゃうか! 会いに行きたい。
――うん。帰っちゃえ。
 私は思い切って天城さんに話しかけた。
「あの、すいません。検定の勉強をしたいので、早めに帰らせてもらえますか」
「お、検定か。頑張れよ。いいよ帰って」
 天城さんに言ってみたら、暫く難しい顔をしていたけどあっさりと許可してくれた。いいのかなぁ。
 あたしはそのままの格好で店を出た。秋も半ばを過ぎた頃、日も落ちるのがだんだんと早くなってきている。夜になると肌寒い。冷える、とまではいかないけれど、風は冷たさが加わったような気がする。二十一時半ごろだから、この頃にはもう星が瞬いている。一番星も遥か上の方に来ている。
 この前と同じコンビニで待ち合わせたから、あたしは真っ直ぐコンビニに向かう。コンビニの駐車場の輪止めに座って、草加君が来る方を見詰めながらじっと待つ。今度はあたしが待つ番。秋の寒空の下待つのは辛い。しかも今はバイト先の制服のままなのだ。だんだん待つのに疲れてきて、外にも関わらずうとうとし始めた。
 メールの着信音で目が覚める。
――着いたよ。
 外から店内を見渡す。いた。草加君だ。
――外にいるよ。
 そう、返信すると店から出てきてくれた。
「いつ来た?」
 草加君が訊ねる。
「十五分前くらい」
「嘘!」
「そこに座って、うとうとしてた」
 そこ、と言うところであたしは駐車場の輪止めを指差す。
「何やってんの。危ないだろ」
 草加君は穏やかに言ったが、表情を見るに本当に心配しているようだった。
 暫くして落ち着いて来た頃、どこ行く? と言う会話になった。あたしは徒歩。いける範囲は自ずと決まってくる。結局、あたしの自宅の裏にある小さな公園に行くことにした。
 徒歩で数分。公園に着くと、小さなベンチに座った。この前と同様、誰からとも無く手を繋ぎ、そのまま話し込んだ。あたしは凄く寒いのを我慢して。
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