御曹司なんてお断りっ◆
建志は、しゅるりと志保の一つに結んでいる
シュシュを取り上げて、
はらりと髪をほどく。
そして、
そのシュシュを自分の腕に通して
嫌味なほど綺麗な笑顔を黒田課長に向けた。
「コンバンハ。えっとーー?」
わざとらしく首をかしげて、志保に紹介を求める。
あぁ。建志、面白がってるなぁ。
と志保は心の中でため息をついたが、
ここで紹介しないのも
お互いに失礼だろう。
「建志。こちらは、黒田課長。
課長、こっちはーーー」
「建志です。柳瀬川 建志。」
『兄です』と言いかけた志保を遮る様に建志は自己紹介をした。
志保と建志の両親は離婚している。
志保は母、建志は父の戸籍に入っているため、
柳瀬川は、父の苗字だ。
「あ。黒田です・・」
そういう、黒田課長は若干の動揺を隠せない。
悲しそうな目で志保を見つめた。
志保は、少し心苦しくなる。
「あの、課長、ーー」
建志は兄です。という言葉をまた建志が遮る。
「じゃ、俺と志保は今からデートなんで、
失礼します。」
建志は志保の肩を無理やり引き寄せて、
くるりとその場を後にする。