鈴姫


「カオル!」


横たわる少女をハルが大事そうに抱きかかえた。


ハルと同じ、銀色の髪。すぐに彼女が香壺であるとわかった。


「ひどいじゃない!投げるなんて!」


怒りにまかせて戦闘態勢に入ったハルの手を、目を覚ましたカオルが掴み、ふるふると首を振る。


「なによ」


カオルは何も言葉を発さず、ただ首を横に振るばかりで、それをハルがもどかしそうに見ながら唇を噛んだ。


「ハル。君は願いの鏡だね。過去を映し出すのも簡単だろう?見せておやりよ、何も知らない可愛い姫君に」


「嫌だよ。あんたの言うことなんか聞くもんか」


勝気なハルは、宝焔に向かって舌を出した。


そうか、と呟いた宝焔がハルに手のひらを向けると、突然ハルが壁まで吹き飛ばされた。



「ハル!」



何が起こったのかわからない。



ハルが抵抗する間もなく吹き飛ばされるなんて。




宝焔は気を失ったハルに近づいて行き、側に膝をついた。


香蘭は、これ以上ハルに何かさせてたまるかと駆けだしたが、なぜか思うように動けない。


転びそうになった香蘭を、憂焔が間一髪支えた。

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