鈴姫
暗い蔵の中で、唯一光が差し込む天窓を睨みつけながら、伯玲は胸がざわめくのを感じた。
きっと、外ではよからぬことが起こっている。
自分がこうして蔵に閉じ込められていること自体異常であり、それ以上に不愉快なことが起きている気がしてならなかった。
「香蘭……」
伯玲を蔵に閉じ込めたのは鈴王である。
それも、香蘭の花婿候補を連れてきたすぐあとだ。
鈴王が香蘭を利用するのに伯玲が邪魔だったに違いない。
王の魔の手から守ると誓っていたのに。
何もできない自分への悔しさで、傷だらけの手を握りしめた。
無事でいてくれ、と祈るばかりの日々を過ごし、閉じ込められてから1ヶ月が経ったころ。
いつも食事を運ぶために開けられる小さな窓ではなく、固く閉ざされていた扉が、重い音を立てて開いた。