花恋-はなこい-
真冬だというのに、

ぽかぽかと暖かい空気。


少しだけ春を感じさせるほどに、

爽やかで穏やかな気候。


しかし、真由の心は

どんよりと厚い雲に

覆われたまま、

キラキラと輝くはずの

太陽がまったく姿を

みせずにいた。


蒼にぎゅっと固く握られている

手首をどうにか

振りほどこうともがく。


そんな真由に構うことなく

蒼はずんずんと歩みを

進めている。


「ねえ、藤岡君。

 いい加減、はなして!」


精一杯の声で真由が叫ぶ。

真由の声を聞き、

蒼が一瞬立ち止まったかと思うと、

真由に視線を合わせ、

にやりとしたかと思うと

急に顔を近づけ、

「あいつ、香坂のこと。

 俺が忘れさせてやるよ」

と真由の耳元で囁いた。





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