ダイダロスの翼
電極手術、とレイノルドは口の中でつぶやいた。

隣で座っている長身の監視者もまた、レイノルドと同じく電脳化しているらしい。


こんな子供がなぜそんな手術を、と疑問に思った刹那、瑞緒がすっくと立ち上がった。


「……仕事が入ったわ」


言い終える前に、レイノルドへ背を向けて駆け出す。

あわてて伸ばした手からも、まるで風のようにするりと抜け出す。


「待てよ」


だが、やはり子供の足。

普段から体を鍛えているレイノルドは難なく追い付くと、瑞緒と並走を始めた。


「いきなり仕事って、どういうことだ」


問うと、瑞緒はポケットに突っ込んでいた手をレイノルドの前へ差し出して見せる。

小さな手に、黒い基盤のような板が握られていた。


「……あなたと話している間もずっと、これで観察カメラの映像を傍受してたのよ。

さっき武器が『見え』たわ」


答えながら、瑞緒は繊細な動きで板へ指を走らせる。


レイノルドはそれに見覚えがあった。

電脳化手術の時、候補に挙がっていた『触覚表示式コンピュータ』に違いない。

使用者の脳内に埋め込まれた電極とリンクした、データの入力はおろか、出力もすべて触覚という代物。


情報の秘匿性が高く、高速かつ大量の情報処理が可能であるが、その分、使用者の脳への負担が大きいことで有名だった。



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