ダイダロスの翼
渥美と峰岡の去った裏路地に、静けさが戻る。

すっかりいつものしれっとした表情に戻った瑞緒は、2人の残した銃を回収していた。


「……俺は住民を、非人道的な研究から助けたかったんだ」


つぶやくと、瑞緒はそっけなく応える。


「峰岡の生計の助けにはなったみたいじゃない」

「笑えるな」


頭に響く痛みまで笑えてくる。


「俺は何をしたかったんだろう」


吹き出すのをこらえながらそう言うと、瑞緒は小首をかしげてレイノルドの目をのぞき込む。

そして不思議そうにつぶやいた。


「あなた、言ってたじゃない。

住民を助けるって。

その考え自体は間違っていないはずよ」


それだけ言い残して、瑞緒は路地から去っていった。


辺りは闇。

明かりはあるのに、なぜだか暗くて仕方がなかった。



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