ダイダロスの翼
地面に置かれた銃は、確かにレイノルドが密輸した銃だった。


住民の解放を目指して渡した武器。


「……その銃」


レイノルドがつぶやくと、峰岡は少し眉を寄せて、ああ、と手を打った。


「兄ちゃん、そうか、この銃を売ってくれたのは兄ちゃんだったか」


峰岡は何度もうなずいて、膝を付いたままのレイノルドに近寄ってくる。

人懐っこそうな表情をわずかに曇らせて、峰岡は続けた。


「ありがとな、兄ちゃん。

ま、そういうわけだ」


何がそういうわけなのか、レイノルドにはさっぱり分からなかった。

頭痛の余韻で耳鳴りがする。

それでもレイノルドは、我ながら滑稽だと思いつつも尋ねてみた。


「……その銃は、研究への反乱に使う予定だったのか?」


峰岡はきょとんと目を丸くして、しきりに首を傾げてから、ようやく答えた。


「悪いな、兄ちゃん。

俺はただの武器商人だ。

銃の仲買いをして暮らしをたてる、しがない違法集団の一員さ」


そうか、とつぶやくレイノルドの頭に、再び頭痛がぶり返す。


住民のためにと渡した銃は、見事にやくざの資金源になっていたのだった。



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