†SweetBlood†
「まず、ここは俺の屋敷の離れだ。この中なら好きにしていい、が外には出るな。狼が出る。」

「はぁ。」
狼と言われても、街中で育った平均的日本人にはその恐ろしさがいまいちぴんとこない。

「喰い殺されたくなければこの離れでおとなしくしてろ。」
「はい。」
冷たい一瞥を送られ、典型的日和見日本人の習性で、深く考えずに同意の返事がするりと零れる。

彼はまぁいいとでも言うように短く嘆息し、説明を続ける。

「まだ名乗ってなかったな…俺の名前はクレイ、紅(くれない)に黎明(れいめい)の黎で紅黎だ。」

彼―紅黎は、私がどんな字だろう?と考えたのを察してか、丁寧に説明してくれた。

「あ。私は天野ゆう、天使の天に野原の野、でゆうはひらがな。」
礼には礼で返さなきゃね。
紅黎に倣って私も丁寧に名乗る。


--―それが、後々どう影響するかも知らずに。
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