意地悪LOVER




「…おかえり、ひかり先輩」



部室に着くと、あの玲皇君の勝ち誇った笑顔があたしを迎えた。
その笑顔を見ると、あたしの腹の中は煮えたぐる。



「…その顔じゃあ、決めたみたいだな?」

「…」

「…ほら、言えよ」

「…」



玲皇君は面白そうにそう言う。こうやって自分のいうことを聞く瞬間がたまらなく嬉しいのだろう。あたしにとっては屈辱的だけれど。



「…玲皇君の…物に…なる…」


下で手を拳にしてぎゅっと握りながら、あたしは呟く。



「ははっ!っ…はははっ!」

「…何がおかしいの!?」


やっぱりあたしの選択は間違っているのかな?
だって、玲皇君を選ばなきゃあたしと大地は今のように仲良く過ごせないかもしれないんだよ?


今のあたしに大地以上のものはないの。
もちろん、あたし自身も大地以上に大切じゃないの。


なら、選ぶ答えは決まってる。



「そこまで大地先輩のこと想ってたんだな」


クスクス笑いながら、玲皇君は再びあたしに近づく。
キスされる。そう予感したけど…あたしに逃げ場はなかった。



「お願い…、キスだけはやめて?」


キスは昔からずっと大切にしてきた。ううん、昔から大切な行為だと信じてきた。
それをこんな形で汚してしまうのはすごく辛い。


「…俺に指図すんな」




玲皇君はあたしの言葉に耳も貸そうともせず、再びあたしに激しく口付けた。





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